Vol.3
社会福祉法人 平塚地域生活福祉会 様

社会福祉法人 平塚地域生活福祉会  スペースセル 就労移行支援事業部  田中直人 様(左から3番目)
株式会社 湘南ビジネスマネジメント 代表取締役 野田周吾(右から3番目)
スタッフ 成川 毅(右から2番目)
湘南ビジネスマネジメントの若手スタッフたち(その他)
藤雪会又木さんと記念写真

精神障がい福祉の必要性を、まっすぐ問い続けるために

田中さんは、弊社(湘南ビジネスマネジメント)代表の野田にとって、初めての障がい福祉サービス系のお客様。平塚の精神障がい者福祉発展のために法人の内外で様々な活動をしていらっしゃいます。国の制度においては歴史的に、不条理な扱いを受けてきた精神障がい福祉。怒りを感じながらも、負けずに国に食らいついていくような田中さんの言葉は、本当にまっすぐでした。今回は、田中さんと出会った頃の野田と同年代の弊社スタッフも同席。当時の野田のように、大先輩・田中さんの言葉に圧倒されながらも、奮い立つ対談となりました。

【社会福祉法人 平塚地域生活福祉会とは?】
1997年に任意団体として、精神障がい者の方の活動支援を開始。2003年、平塚市で初となる精神障がい福祉サービス系の社会福祉法人に。国の制度や、利用者さんのニーズに柔軟に対応しながら、現在では、企業の下請け業務や弁当製造を主な活動にした就労継続支援B型事業や、一般企業への障がい者就労を支援する就労移行支援事業を展開している。
http://cell-hiratsuka.sakura.ne.jp
12年前から変わらないこと
野田:今となっては、多くの障がい福祉サービス系のお客様とお付き合いをさせていただいていますが、平塚地域生活福祉会さん(以後「福祉会」)が最初に担当させていただいたお客様でした。私が31歳の時。12年ほど前のことですね。
田中さんは当時、「セルマーレ平塚」という、精神障がい者の方が働く飲食店で支援をされていました。カレーがすごく美味しかったことを今でも覚えています。
田中:そうですね。私は43歳で、ちょうど今の野田さんくらいの年齢だったはず…。野田さんと初めて会った時は、随分若い人が担当だなぁなんて思ってました。

野田:そして、現在、福祉会さんを担当している弊社の成川は、32歳。ちょうど田中さんと出会った頃の私と同じくらい。今日は、私の30代を感じてもらいたくて連れてきました。

田中:あの頃から、野田さんの人柄は全然変わらないね(笑)。
野田:昔からどんどん前へ行き過ぎる性格で、よかれと思って田中さんとこのパソコンの設定を勝手に変更しようとして、こっぴどく怒られてしまったこともありましたね・・・。

田中:ああ、ああ、当時お金がなくて業務用PCも私が組んだものだったので、余計だったかもしれないね。かなりひどく怒ったよね。でも、野田さんはタフでした。その後も何事もなかったかのような笑顔を見せてくれた。この笑顔は今も、変わらない。
余談だけど、あのときあまりにもひどい怒り方をしてしまったから、その後とても反省して贖罪(しょくざい)、大袈裟?(笑)、の意味もあって野田さんのところを同業者(仲間)に紹介したこともありました(笑)。

野田:いえ、あのときの笑顔は完全に引きつり笑いです・・・。田中さんから数多くのお客様をご紹介いただきました。本当にありがとうございました。

田中:人様に紹介できるってのは、むしろ野田さんの人柄と、会計アドバイスの的確さ。「ここはいいぞ」という思いがあったからだよ。うちみたいな小規模な法人(仲間の精神関係の事業所も含め)は、法人会計のことがきちんとわかる人材がほとんどいなかったら、みんなとても助かったのです。
領収書一枚一枚を、世の中に見せる意気込みで
田中:歴史ある地域の福祉関係の事業所の多くは、家族会などその事業を支援する母体があって、そこが集めたみんなのお金で事業所を立ち上げ、その財産をつくったものなんです。でも、うちの事業は少し特殊で、そのような母体を持たずに事業を始めたこともあって、法人化にあたり初代会長が(私の義理の父親でもあったのですが)主な資金を法人に寄付して始めたという経緯がありました。いわばワンマン法人、同族が法人を立ち上げたという目で見られがちでした。その閉ざされたイメージを払拭するために会計の公開性をより担保しなければということで、会計事務所さんに関わって頂く事にしたのです。運営サイドでは、法人の規模からして会計ソフトによる管理でよいのでは、との声もあったのですが…。それで担当者として来られたのが、野田さんでしたね。
野田:会計業務のお手伝いをしている中で、何百何千もある仕訳一つひとつの妥当性について、徹底されているな、と印象に残っていることがあります。福祉会さんではないのですが、田中さんが理事長をされているNPO法人で、ある時、職員同士のボーリング大会の景品代が「交流事業費」で処理されていました。その書類を見て、田中さんは「違う」と。「交流事業費」は、職員同士のみで使用する費目ではないから、適正な科目に変更をしよう、ということになりました。そのとおりだと思いました。
それからは、他のお客様に伺ったときも、数字の裏で人がどのような「想い」をもって動いているのか、なるべく理解しながら確認するようになりました。
田中:社会福祉法人は公金で成り立っている。だから、規模に関わらず、納税者の方々に会計をきちんと公開するべきだと思っています。領収書一枚一枚をね。 最近の政治とカネの問題もそう。特権意識があると、どこかで自分たちを甘やかしてしまいがちだから、厳しく見ていかなければならないと思うのです。
押し寄せる福祉の大改革
野田:当時の記録を見ていると、2007年に「どうなるか不安」と書いてあるんです。「障がい者自立支援法」が施行された翌年に、田中さんがおっしゃった言葉でした。

田中:「障がい者を納税者に」という国の思惑にがっかりでした。具体的には、障がい者の方の日中活動を「就労」に限定。さらに、サービスはタダではないということで、保険制度の様に利用者さんから原則ですが利用料を1割負担でとるようになりました。
当時、新制度への事業移行期間が数年あって、利用料がネックで新制度移行へ二の足を踏んでいた他の事業所もありましたが、我々は「福祉は国家責任であり、制度はそれに関わりながら、その実態の中から変える」という考え方から、真っ先に新法の事業に飛び込んでいきました。
では、利用料を凌駕する工賃を出せるような売上の見込める仕事をしなければ、と職員主導で始めたのがお弁当作り。でも、利用者さんはどんどん減っていった。「前は自分の好きな活動をしていたのに、どうして職員の都合で作業をさせるんだ」「なぜ、工賃よりも高い利用料を支払わなければならないんだ」と。その気持ちもわかる。やりがいがあってこその労働ですからね。
この法改正は、利用者さんの数に応じて事業報酬が算定される「個別給付」の制度への切り替えでもあって、利用者さんが減るということは法人の経営上非常に危機的だったし、自分の理想と国の方針との間の葛藤で、鬼のようになっていましたよね。

野田:田中さんをはじめ現場の職員の方々は、利用者さんの利用日数を気にして、一生懸命考えていらっしゃいましたよね。
国に問う、精神障がい福祉の必要性
田中:このことが全国的に問題となって、自立支援法施行後、2年経過した時に、利用者さんの課税状況により利用料を減免するという緩和措置がとられたのです。ただ、精神障がい者には不利なことがあった。配偶者に稼ぎがある場合には、夫婦の絶対扶養義務の観点から世帯分離の対象にならないとして利用料をとると…。精神障がいの方は結婚されている方も多く、特に女性ですが、配偶者に迷惑をかけているうえに利用料のことを夫に相談しづらいと、サービス利用を断念してしまう。そうやって精神障がい者は、制度のすきまに追いやられてしまう。法人を続けていく自信を無くしそうになるくらい、非常に厳しい状況でした。この件は障がい者全体からすると対象事例が少ないし、夫婦の絶対扶養義務は民法の規定だからと声をあげても消されてしまう。そんな感じでした。
精神障がい者に対する福祉は、身体障がい者・知的障がい者に対する福祉と比べるとだいぶ遅れているし、社会の認識・理解も厳しい。きちんと福祉の対象になったのはこの平成18年の自立支援法ですよ。薬を飲まなければ、眠れなくなったり、死にたくなったりしてしまうなんて、絶対に生活面での支援が必要でしょ?障がいが目に見えない、症状によって障がいのあり方や程度が変化する。こんなの障がいとは言わない、障がいとは固定しているものだと、ずーっと「病気」のせいとされてきて、医療の対象ではあっても、生活面からの福祉の対象ではなかったのです。「この世に精神病はあっても精神障がいなんてない」と言いきった精神科医に「病気」なら治してみてくれ、と迫ったこともありましたよ、遠い昔にね(笑)。
あれから30年、たしかに精神障がい者福祉は変わったと思う。しかし、まだまだ不全。どんな障がいであろうが、必要な時に必要な福祉を国の責任においてきちんとなされるべきだという我々の主張は、「社会福祉法人」としての実績や社会性がないと通らない、国にどんなに振り回されても食らいついて変えてゆくという姿勢で、その正当性や必要性を訴え続けるしかないと思うわけなのです。

野田:苦しい時を乗り越えて、2010年には大きな黒字も生まれましたよね。

田中:まあ、いまでも苦しいんですが…(笑)。あの時は、就労継続B型事業の一事業所であった「セルマーレ平塚」を廃止して就労移行支援事業に本腰を入れたことや、作業内容を転換することでの弁当事業の発展(当初の20倍の製造量に)があったからね。いろいろあったけれど…。
なにより、利用者さんも職員も、制約はあるものの国の制度にようやく慣れてきたことが大きかったのではないでしょうかね。
経営には、利用者さんの間接支援も必要
野田:福祉をとりまく制度は、これからも変化し続けていくと思うのですが、これからも弊社に期待していただけることはありますか?

田中: 大きい法人だったら、経営計画に専念できる部署もあるかもしれないけど、私たちは兼務。本職は利用者さんの支援や社会的な運動だから、いわゆる経営については非常に弱いのです。作業工賃アップの観点からは、お弁当事業の育成のためにどうしたらいいか。一般企業的な経営感覚でどう考えるべきなのか、アドバイスをいただきたい。

野田:弊社のWEBサイトの私の挨拶の中に、「自分たちはご利用者の直接支援をする。ただ、野田さんたちも間接支援をしているということを覚えていてほしい」という言葉があるんですが、実は、これは田中さんからいただいたものなんです。会計や給与の事務を受託するだけではなく、一緒に経営に向き合ってほしいというメッセージとして真摯に受け止めました。
田中:法人経営の観点からすれば、会計には、先を見通す力があると思います。そこが醍醐味だよね。世の中に対して公開性を保つ機能は当然で、その上に立って「今の経営状況で、我が法人の福祉サービスはどうあるべきなのか?」「事業展開やいかに、適正な規模とは?」「今後の人口動態から、我々はどのような事業を行い、社会貢献できるのか?」、そういうことまで冷静に分析し、計画を立てていかないと法人格を維持することは難しい。現場主義の個人的な思いつきだけではできない。そこのところを、広い視野を持って手伝ってほしいのです。
これからも、一緒に成長できるパートナーとして
野田:私は、この仕事が大好きです。田中さんのような熱い志をもったお客様と一緒に、職員さんや利用者さんのことを考えるこの仕事が。だから、湘南ビジネスマネジメントという会社をつくりました。でも、私一人では限界があります。弊社のスタッフ全員が、5年・10年と経験を積んで、お客様とお互いに成長していける、そんな会社になればいいなと思っています。

田中:期待してます!
成川:私は入社して1年ちょっと。今、福祉会さんを担当させていただいていますが、それまで障がい福祉は未知の世界でした。本当に一から学ばせていただいています。
田中さん、最初はちょっと怖いなと思っていたんですが(笑)、たわいのないことから踏み込んだ知識まで、色々とお話をしてくださって。ありがたいです。
田中さんと野田が築いた関係をもっとよくしていきながら、一緒に成長していきたいし、私に後輩ができたら、野田の想いを引き継いでいきたいです。今日みたいに、昔の話ができるように。
野田:私もどれだけ多くのことを教えていただいたか。お会いした時にはもう、「田中さんから全部盗まなきゃ!」と意気込んでましたから(笑)。

田中:成川さんには、お客さんから会計を都合良くごまかしてくれと頼まれても、「御法人のためになりません!」と正面切って言えるようになってほしい。
また、社会福祉法人ではない資本主義の中で生きている一般企業のお客さんもいるんですよね?どちらの流儀にも対応できるように、より一層懐を深くして頂けるとありがたい。
その上で、真面目で頭の固い社会福祉法人の経営者には、一般的な経営感覚を教えてほしい。
この二面性が、湘南ビジネスマネジメントの強みだと思いますね。

野田、成川:ありがとうございます!

田中:信頼できると思うまでは、なかなか人当たりが厳しい私だけど(笑)、湘南ビジネスマネジメントのスタッフの皆さんには、それぞれ良さがある。これからもよろしくお願いしますよ!
藤雪会の皆様と集合写真

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